私が訪れたことのある施設の人たちのドキュメンタリー映画を観た。映画にはなかった「私が現場で聞いた話」も交えてシェアしたい。内容はかなり際どいことも書いたので、苦手な人は読まないで。
ピンクルームとは、買った処女を連れて行く部屋
映画のタイトルは「ザ・ピンクルーム」。映画の中で、売春宿の細かく仕切られた部屋がたくさんある階の上にある処女を買った時の専用の部屋がそう呼ばれていた。
カンボジアの売春の代表地、スワイパック。ここで、多くのまだ年のいかない子供達や少女たちが売られていた。更にこの街のビジネスを支えるために、極端なケースを受け入れるようになっていたという。児童を好む変態とか、拷問などを好むなど。ひどいケースは身内に強姦されて売春宿に売られ、拷問まで受ける。
一人のミエンという名前の父が酒飲みギャンブルDVで、母を助けるために、自らを売った女性にスポットを当てている。彼女は、到底抜け出せないと思っていた場所から救出され、時間をかけて自分を取り戻して行く。
そして、お母さんを守るため実家の隣で、小さな縫製屋さんをやりたいという夢を持てるようにまでなる。
救う側も命がけ、救った後の儀式とアフターケア
そんな中で、2006年に米国人牧師のドン・ブリュースター氏が「アガペー・インターナショナル・ミッションズ(AIM)回復ホーム」を設立。
素晴らしいのは、この施設に入った時に「プリンセスセレモニー」という儀式を行う。小さな冠に自分のポスターがプレゼントされ、彼女たちはそこから自由な道を生きることになる。
しかし性的トラウマだけでない、ものとして扱われてきた尊厳の喪失、セルフイメージや様々なのトラウマの回復には莫大な時間がかかるため、そのプログラムを準備し、スキルの高いスタッフを研修し配置するなど高度な準備が必要だ。
またどこでどんな人身売買がされているかを、現場に客のふりをして忍びこむ。その場所で売春をしている店であれば、警察と連携して現行犯で捕えることができるが、最近は巧妙になっていてカラオケバーなどにして、そこで気に入った女性を店外に連れて行くパターンが70%だという。
少女の値段は、フルーツと同じ500円
レシートには、ひと房の葡萄$5、カラオケガール$5(約500円)と、ビール$4.2とある。女性の値段がビール1本と80円しか変わらない。そもそもこんなレシートが存在するとは。。
最後にミエンさんが夢に向かって一歩を踏み出していく。
この白髪の牧師さんが、最後にインタビューに答えながら、最後にこのシャツは「ミエンが縫ってくれたものです」と言いながら泣いてしまうシーンには、グッときてしまった。
私がカンボジアの施設で聞いた悲しい話
数年前、私がこの施設にアポイントをとるのに3ヶ月かかった。なぜなら誰にも施設の場所を知られてはいけないという。いくら救出に成功しても、また戻ってしまう女性たちが多い理由に、家族が乗り込んできて女性を連れ出し、また売ってしまうからだという。お金が必要で自ら戻る女性もいると聞いた。
男たちの性癖・性欲がなくならない限り、難しいのだろうか。いや、そんな単純な話ではない。
ポルポト時代、子供に親を拷問、殺させる
背景として、ポルポトの大量虐殺時代に数百万人の、知識人から様々な分野の専門家、しまいにはメガネをかけているだけで殺される、そして家族を離れ離れにして、子どもに親を拷問・殺させたこともあったという。
そして今、その時の子供達が親の世代になっている。
道徳観ではくくりきれないレベルの、様々なことが絡み合った歴史のあるカンボジアで、経済成長している裏側のなくならない闇に向かう人々に改めて感動した。
一人の若いアメリカ人男性は、時に声を詰まらせながらも、自分の仕事は最高だから、お金がなくても幸せだと語っていた。
日本に生まれただけで、世界の1%に入る恵まれた環境にいる私たち。一文無しになっても、生活保護を申請すれば国がお金をくれる。助けてくれるNPOや相談機関もたくさんある。
今、自分が抱えている問題を振り返ったら、きっと大したことない。
必ずそれは、解決できるから。
2011年製作/カンボジア/作品時間57分
2014エミー賞受賞ベスト・ドキュメンタリー
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