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温井和佳奈

起業前11話:1ヶ月ぶりに出社したら・・

ウルトラクイズの敗者となった私は、ネブラスカ州のリンカーンというアメリカ中西部にある場所からだと、1日で帰国は難しくロサンゼルスまで飛び、そこで一人でホテルに泊まった。一人で食べる夕食、一人で見るホテルからの夜景、誰と一緒にいるかで、同じ素敵な景色も全く違うものに見える。

そして帰国。各クイズの撮影も1日がかりだったし、移動日は日テレが観光に連れて行ってくれたりと夢のような日々を過ごして、私は今までの緊張がとけたのと、少しの喪失感で起き上がれなかった。

だめだ、もう一日休もう。ここまで休んだなら、もう一日くらい休んでも同じだ。

散々寝た後に起きて上司に恐る恐る帰国報告の電話をすると「よくやった」と言われたので安心した。

翌日、真っ黒に日に焼けた私は、元気に「おはようございます!」とオフィスに入った。上司は、ニコリともおはようも言わずに

「すぐに支店長室へいけ!」という。なんとも微妙な空気がオフィスに漂っている。。

もしかしたら電話で殴られるのは、今度は私かもしれないと、恐る恐る支店長室をノックした。入りなさいという声が聞こえて、ドアを開ける。

「・・・やっと帰ってきたか」

「本当に申し訳ありませんでした!」と私は頭を下げて、電話が怖くて目をつむる。

「よくやった!」耳を疑う言葉。目を開けると支店長が微笑んでいた。

「しかし、君が休んだことをよく思っていない先輩たちはたくさんいる。だから僕は立場上、みんなの前ではうんと温井さんを大声で叱らなければならない」

そうか。支店長ともなると色んな立場の人のことを考ないといけないんだな。

「ちなみに日興証券の名前というか、うちの支店名は出るのかな?」

「はい、福留アナは何回か支店名まで言ってくださいました。私自身も何回か支店名を言ったので、多分全国放送された時に支店名も出ると思います」

「そうか。支店名も出るのか・・・君は日興証券の誇りだ」

「本当にありがとうございます」と言って私は支店長室のドアを閉めようとした時、たっぷり叱られた、という顔で席に戻ってくれとおっしゃるので、私はドアをしめて「神妙な顔」をして自分の席に戻った。

少し気まずい雰囲気があったが、9時になると株式の実況放送が流れ、電話が絶え間なくなり、お客さんが押し寄せ、ストップ高の銘柄が出ると拍手が起こる。

そんな中、直属の上司にも呼ばれて小言を言われた。小言が長いので、途中で私は言った。

「本当にすみませんでした。申し訳ないと思いましたので、日興証券を宣伝させていただきました。日テレ試算によると宣伝広告量は安く見積もっても3,000万円だそうです」

「誰も宣伝してくれなんて頼んでいない」と更に怒られてしまった。

「では、日興証券と連呼してもらった部分はカットしてもらうように日テレに連絡いたします」と私は余計な一言をしっかり伝えて、席に戻った。

しばらくしたらニコニコ顔の上司がやってきた。そして耳元で囁いた。

「結果、君は頑張った。さっきの、カットしてもらわなくていいからね」

サラリーマンの性を見た気がした。

そして先輩方の反応は2つに分かれた。会社を1ヶ月も休むなんて信じられない派と話聞かせて派。信じられない派からは、私が「新人類」の頂点とされてしまった。

そして「新人類」同期だけは、大騒ぎで喜んでくれた(笑)

1日を振り返り、思う。ウルトラクイズの途中で、会社名を出すお願いをしておいて、本当に良かった。

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◆ 続きはこちら:起業前12話:いざテレビ放映、反響が凄まじかった

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