「温井さんは自分でやるべきだよと。自分が代表になって事業をやったら?」
なんだかとてもワクワクした。
当時は1,000万円の資本金がないと株式会社を設立できない時代だったので、私はそのお客さんの会社の新規事業部の「代表」となり、1,000万円の資金ができるまでは、その会社の一事業部として書類上の決算はやってもらうことにした。
同じ会社内での決算だけど「別会社」と思ってやってねと念をおされた。
「5万円くらいの家賃のところを探しておいでよ」
と言われて、私は早速事務所となる物件を探しにいった。
しかし5万円の物件だとワンルーム、不動産会社の「予算オーバーですが、、」にのせられて物件を見たら最後、私は15万円の事務所にどうしても入りたくなった。
その物件は、2LDK。1部屋は仕事部屋に。もう一つの部屋はお客様がいらした時の応接室にいいな。駅からも近いし落ち着いて仕事ができそう。
そして、、、私は契約してしまう。
証券会社の営業時代、毎月ノルマが数千万円だった。営業は好きではないが、数字はそれなりに上げていたから、15万円をペイするくらいの売上は、なんとかなるだろう。
「物件は見つかった?」
「はい、少し予算オーバーしてしまいましたが」
「そうなんだ。どれくらい?」
「えっと、その15万円です」
「え?5万円じゃなくて?」
「はい、、15万円、、です」
「えぇ !? まさか君、契約してないよね?」
「それが、、もう契約しました」
「なんだって?売上の目処はあるの?そもそも何の事業をやるのかな」
「・・・それも、これから考えます」
お客さんは、唸っている。私に独立をススメたのを瞬時に後悔している様子だった。しかし顔を上げてこう言った。
「そうだな。これくらい自分を追い込んでやるのはいいと思うよ」
彼も私に独立を勧めてしまった手前、何をやるのか一緒に考えようと言い、次回はお互いに案を持ち寄りブレストをしようということになった。
わかりました!と言い、私はいそいそと仕事机と応接室のソファーを買いに行った。白い机とソファーが届くと途端に事務所らしくなり、お客さんの心配をよそに私は嬉しくなっていた。
15万円の家賃ならきっと支払える。だって日興証券であれだけ営業の数字を毎月あげていたんだから。
と、私の28歳の起業?はやることも決まっていないのに、15万円の家賃の事務所を借りたところから始まった。
●わかな語録:根拠のない自信を持とう